看護師の離職率ー8割が「辞めたい」その理由は?ー

ナース

看護師の離職率ってどうなの?
なんで辞めたいの?

と、思ったことはありませんか?

病院では、看護師の離職者が多く、人手不足が慢性化してきています。

この記事では、厚生労働省や日本看護協会、医労連含む3労働組合の調査報告をもとに、

看護師の離職率
「辞めたい」と思う理由

についてご紹介しています。

結論としては、

既卒者の離職率は高い

人手不足の悪循環が「辞めたい」を後押し

家族との時間と、仕事とのバランスがとれない

それでは、詳しく解説していきます。

離職率

看護師の平均離職者数をみると、

平均離職者数:11.6%(新卒:10.3%、既卒16.8%)
              2022年 病院看護・助産師実態調査(日本看護協会)

この値は、1年のうちに、100人中11.6人が辞めているという数値です。

産業計は、平均13.6%(令和3年雇用動向調査 厚生労働省)

他職種と比べると、平均的には低いといえるものの、既卒者の離職率としては高めです。

ちなみに、このデータは、病院の離職率になります。

離職率は、病院の規模によっても違ってきます。

病床規模99床以下100~199床200~299床300~399床400~499床500床以上
離職率(%)12.112.812.212.010.710.8
                               2022年 病院看護・助産師実態調査(日本看護協会)

病床が多い方が離職率少ないですね。

理由は不明ですが、大きな病院ほど、教育体制や福利厚生、応援などの支援体制、給与額が充実していることが考えられます。

「辞めたいと思う」8割

医労連含む3労働組合の調査によると、仕事を辞めたいと「いつも思う」24.0%、「ときどき思う」55.2%という結果が(2022年 看護職員の労働実態調査)。つまり、約8割が辞めたいと思いながら働いているという集計です。

仕事を辞めたい「いつも思う」の中身をみると、

一番多いのは一般病棟
  「一般病棟」27.6%、「集中治療室」24.3%、「手術室」23.0%
夜勤がある方が辞めたい
  「日勤のみ」17.4%に対し、夜勤(2・3交代、夜勤専従)は約26.0%
時間外労働が増えるほど辞めたい
  「なし」13.7%、
  「20~30時間」30.0%、「50~60時間」38.1%、「60~70時間」42.2%
休憩がとれないほど辞めたい
  「きちんと取れている」20.0%
  「全く取れていない」日勤43.4%、準夜勤39.8%、深夜勤41.1%、2交代47.7%
辞めたい人ほどやりがいを感じていない
   やりがいを「強く感じる」「少し感じる」は25.5%、「まったく感じない」は63.1%

夜勤や時間外労働が増えるほど、辞めたい気持ちは強くなり、やりがいも少ないようです。

辞めたい理由

仕事を辞めたい主な理由としては、こちら。

看護師の仕事を辞めたい主な理由
1位人手不足で仕事がきつい
2位賃金が安い
3位思うように休暇がとれない
4位夜勤がつらい
5位思うような看護ができず仕事の達成感がない
6位職場の人間関係
7位家族に負担をかける
                 「2022年 看護職員の労働実態調査」日本医労連・全大教・自治労連

人手不足

入職者が少ない一方で、離職者が多い
少子高齢化も相まって、人手不足は悪循環の一途
世界的にみても日本の看護師配置は少ない

看護師の求人倍率は1.33倍

この値は、1.33人の求人に対し、1人の求職者という数値です。

「あれ、結構低くない?」と思った方、いるのではないでしょうか。

長年、看護師の求人倍率は2.0倍以上をキープしていたものの、令和4年度は求職者が急増し、一気に倍率が下がっています。理由は不明ですが、コロナウイルス感染症への対応や、ワクチン接種支援が影響している可能性があります(ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析 日本看護協会)

厚生労働省によると、産業計の平均有効求人倍率は1.31倍です(令和4年 一般職業紹介状況)

少子高齢化の加速

看護師不足に拍車をかける、少子高齢化。

日本の高齢化率は28.9%。

これは、世界的にみて最も高い数値です。

令和47年には、2.6人に1人が65歳以上になると見込まれています。

令和2年の時点で、高齢者1人を2.1人の現役世代で支えている状況。これに対し、令和47年には、高齢者1人を1.3人で支える社会になると推測されています(令和4年版高齢社会白書)

世界水準の1/2

100床あたりの看護職員数としては、OECD単純平均183.4人に対し、日本は87.1人と、平均の約1/2です(OECD Health Data 2017)

これは、OECD加盟国35ヵ国中、30位という結果です。

人手不足が現場に与える影響

ミスを起こしやすい

スキルアップできない

休憩や休みがとれない

夜勤の成り手がいない

患者担当、委員会業務など仕事が増える

人間関係がぎくしゃくする

人員が不足することで、看護師1人への業務が増え、休みもとれないために、ミスを起こしやすくなったり、スキルアップを図ることができなくなりやすい状況です。また、余裕がなくなることで、職場の雰囲気など、人間関係にも影響を与えやすくなります。

看護師に余裕がないと、患者さんへ影響を与えかねません。厚生労働省によると、今後も看護師不足の一途を辿る、という推計が報告されています(長期的看護職員需要見通しの推計)。人手不足は、今後も大きな課題となりそうです。

賃金が安い

看護師の平均年収は、508万円(令和4年賃金構造基本統計調査 厚生労働省)

他職種と比べると、高めの年収です。が、これは、夜勤と時間外手当分の約72万円分を合わせた年収です。つまり、看護師の年収は、夜勤と時間外手当を含めて、高めの年収となります。

パートタイムの平均時給は、1500~1800円(令和4年賃金構造基本統計調査、2021年病院看護実態調査)

これも、他職種と比べると高めです。

ただ、時給換算すると、サービス残業、研修、勉強会、着替えの時間など、未申請分の時間外業務が多いほど、「割に合わない」と思ってしまうかもしれません。

加えて、看護師の仕事は、命を預かる責任の重い業務が多いです。ミスを犯さないように、またはちょっとしたミスでも、ストレスは半端ありません。

「割に合う」働き方を求める看護師は、多いのかもしれません。

思うように休暇が取れない

病院の平均年間休日数は、116.8日

週休形態は、約半数が4週8休制(週休2日)をとっています。さらに、約23%が完全週休2日制をとっています(2022年病院看護・助産実態調査 日本看護協会)

日本の労働者1人平均年間休日は115.3日(令和4年就労条件総合調査 厚生労働省)

さらに、有給取得率の平均は65%です。対して、日本の労働者1人平均有給取得率は58.3%

これだけみると、看護師の休日は他職種に比べて、日本の平均を上回っています

「思うように休暇が取れない」理由としては、以下のことが挙げられます。

休みの日でも休暇がとれない
夜勤前の仮眠、夜勤後の睡眠
 慢性疲労
連休がとれない
家族と休日が合わない
土日祝日、年末年始の勤務

医労連を含めた3労働組合の調査報告によると、看護師の休日の過ごし方の第1位は「家事」、2位「睡眠」、3位「育児・子ども関係」。「趣味」は第4・5位。

また、「休日でも回復せず、いつも疲れている」27.1%、「疲れが翌日に残ることが多い」51.3%と、8割が慢性疲労」を抱えています(2022年看護職員の労働実態調査 日本医労連・全大教・自治労連)

病院勤務では、多くがシフト制です。人手不足も相まって、休日希望が通りにくい場合もあるようです。また、土日祝日、年末年始も勤務が必要なため、家族との時間がとりずらいということも。

ライフスタイルに合わせて、夜勤の有無、休日パターンのあった職場を探すことが大切になりそうです。

夜勤がつらい

病棟勤務における夜勤の平均回数
         3交代:7.2回 、 2交代:4.3回
             2022年看護職員の労働実態調査 日本医労連・全大教・自治労連

そもそも、人の体は、昼に活動し、夜に休息するようにできています。そのため、夜勤による体への負担はとても大きいです。

また、シフト制により、夜勤をしたり、日勤をしたりするので、生活リズムは不規則になりがち。

さらに、4~5割の夜勤者が、勤務の前後それぞれ30分以上の時間外労働を行っている報告も(2022年看護職員の労働実態調査 日本医労連・全大教・自治労連)

夜勤では、少ない人数で、コール対応や、配膳、配薬、口腔ケア、経管栄養、血糖測定・インスリン注射、排泄介助、巡視、採血、バイタル測定などを行います。

転倒リスクの高い患者さんがいる場合は、センサーコールがなればダッシュして駆けつけます。急性期では、術後の患者さんが帰室したり、点滴やドレーン管理、吸引などを行うことになります。

夜勤中は、人手が少なくなるので、責任感が強くなるというのも精神的な負担となるでしょう。

夜勤による、身体的・精神的負担の大きさは、計り知れません。

達成感がない

「十分な看護ができている」3割

医労連含む3労働組合の調査によると、十分な看護が「できていると思う」2.2%、「大体できていると思う」30.5%との結果。

夜勤を含む勤務形態者や、時間外労働が多い、休憩時間がとれない人ほど、十分な看護が「できていない」と思う比率が高いようです。

また、十分な看護ができていない理由としては、「人員が少なく業務が過密」が8割を占めています(2022年看護職員の労働実態調査 日本医労働・全大教・自治労連)

ここでも、「人手不足」が大きく影響しているようです。

人間関係

「パワハラ」3割

医労連含む3労働組合の調査によると、パワハラを受けたことが「よくある」6.1%、「ときどきある」28.4%との報告結果が。

パワハラを受けた相手は約6割が「看護部門の上司」

また、人手不足により、互いの余裕がなくなり、人間関係に影響をあたえやすいことが推測されます。

家族への負担

女性が多い職業なので、結婚や出産、子育てによるライフスタイルの変化は多いでしょう。

「子どもとの時間を大切にしたい」と思う看護師は多いはず。また、「子どもを夫や両親にみてもらっている」「子どもが1人で家にいる」という状況もあるでしょう。

また、両親の介護が必要になるケースもあるでしょう。

「家族を大切にしたい」という思いは、看護師の仕事との折り合いが難しいときがあるようです。

まとめ

この記事では、

  看護師の離職率ってどうなの?
  なんで「辞めたい」の?

という疑問に対し、厚生労働省や日本看護協会、医労連含む3労働組合の調査報告をもとに、看護師の離職率、「辞めたいと思う」理由について解説しました。

結論としては、

既卒者の離職率は多い
 人手不足の悪循環が「辞めたい」を後押し
家族との時間と、仕事とのバランスがとれない

人手不足はまだまだ続きそうです。

それでも、「家族との時間」「自分の生き方」は大切。

自分がどう生きたいか、何を大切にして、仕事をどうしていきたいか、今一度立ち止まって考えてみませんか。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

少しでも、看護師の「辞めたい」で悩む方の力になれれば嬉しいです。

今日も、肩の力を「はぁ~」と抜きましょ(*´Д`)

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